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帰る国を忘れてしまったから平気 と 旅をつづけた


        そのひとは
                   有田忠朗

               1

        風が大きな野原を渡るように
        草の背を乗りついで海の彼方へ
        あるいは長い川のある大陸へ
        淡々と渡っていった
        永遠の夏を宙吊りにして

        砂漠のどこかにパスポートを置き忘れても
        帰る国を忘れてしまったから平気 と
        旅をつづけた

        死は生と同じく
        あなたの限りない旅の途中の
        ひとつの入り口 そして出口だった 

        あなたが書いた詩は
        位置だけあつて大きさのない点の集まりに似て
        この世に透明で正確な図形を描いた
        読めば 風が茫々と草を靡かせ
        海を泡立たせて
        あなたが旅立つた跡を教えてくれるだろう

        その跡をたどれば
        ぼくらはまた
        どこかであなたにゆぐり会える
        あなたはあなたの死を通して
        生きることと死ぬことの意味を
        ぼくらに教えてくれた

        (さよならは言いません
        またいつか)


              2

        レモンを輪切りにした
        碧空に投げると
        それは見るみる駆け上がり
        灼けつく大気の中で太陽の車となつた

        マグナ・グラエキア
        その町や岩山で
        きょうも石を刻む男たち
        魚を揚げる女たち
        きみらは見たか
        さきほど海を渡つて
        南の方へ
        すばやく通過して行った
        ひとりの死者を

        そのひとは
        他界のドアをそつと開けると
        翼なく さりげなく
        晴朗な微笑をたたえて
        とおい彼方へ消えた

        風の小さなかたみを残して

                         『同時代』2003年6月号掲載
                         多田智満子氏への追悼詩




草の背を乗り継ぐ風の行方かな  智満子





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